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固定ドと移動ドの違いとは?絶対音感と相対音感の音の捉え方の違いを解説

2021.01.20 

固定ドと移動ドの違いとは?絶対音感と相対音感の音の捉え方の違いを解説

  • 固定ドと移動ドはどう違うの?
  • 絶対音感と相対音感にも関係あるの?

本記事では、このような固定ドと移動ドについての疑問にお答えいたします。

「固定ド」は絶対音感と関係していて、ほとんどの場合、絶対音感は幼少期の訓練によって身につきます。

「移動ド」は、カラオケでキーを変えてもすぐに対応できて歌える方であれば、自然と理解できています。「移動ド」は相対音感と関係していて、絶対音感とは音の捉え方が異なります。こちらは比較的大人になってからでもトレーニングで身につけたり鍛えたりできます。

本記事では、固定ドと移動ドの違い、絶対音感と相対音感の音の捉え方の違いを解説します。

固定ド、移動ドとは?

「固定ド」は、曲のキーに関わらず音名をそのまま読んだり、発声したりする方法です。「ド」はいつでも「ド」であり、結果として固定されることになります。音名で譜面を読むことから「音名読み」とも呼びます。

「移動ド」は、曲のキーに合わせて「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」の位置を変えて譜面を読んだり、発声したりする方法です。基準となる音を「主音」とし、それを起点に相対的に音の高さを表し、階名で譜面を読むことから「階名読み」とも呼びます。

簡単に言うと、「ド」の位置を固定させる=「固定ド」、「ド」の位置を移動させる=「移動ド」ということです。「え?ドの位置って移動するの?」と疑問に感じた方も多いかもしれません。

この説明だけだとピンとこない、そもそも「音名」と「階名」がわからない方も多いかと思います。「固定ド」と「移動ド」を詳しく解説する前に、「音名読み」と「階名読み」について解説します。

音名読みと階名読み

「音名」は、「絶対的な音の高さ」を表す読み方・書き方です。曲の調(キー)が変わっても”固有の音名”で音を認識します。「音そのものの固有の名前」と考えてください。

代表的な「音名」は、「C D E F G A B(英・米式表記)」「C D E F G A H(ドイツ式表記)」「Do Re Mi Fa Sol La Si Do(イタリア式表記)」「ハ ニ ホ ヘ ト イ ロ ハ(日本式表記)」などです。「Do Re Mi Fa Sol La Si Do」は、みなさんもよくご存知の「ド レ ミ フ ァ ソ ラ シ ド」です。

「音名読み」の場合、英・米式表記の読み方なら、曲のキーが変わっても「C」は「C」、「D」は「D」というように、「音そのものの固有の名前」は変わりません。

一方、「階名」は「相対的な音の高さ」を表す読み方・書き方です。曲の”基準音との相対的な音の高さ”で音を認識します。絶対的な音の高さで読む「音名読み」と異なり、「曲のキーに合わせて音の名前を変える」のが「階名読み」です。

「階名」は、主に「ド レ ミ フ ァ ソ ラ シ ド」を使います。「階名読み」の場合は、曲のキーに合わせて音の名前を変えます。どのキーでも「ド」から音を数えるので、キーが変わっても「ド レ ミ フ ァ ソ ラ シ ド」という並び順は変わりません。

たとえば、キーが「Aメジャー」の曲の場合、階名読みでは基準音の「A」=「ド」と捉えます。以下の譜面をドレミで音名読みした場合、「A」=「ラ」になるので、「ラ シ ド♯ レ ミ ファ♯ ソ♯ ラ」と読みます。日本では「ド レ ミ フ ァ ソ ラ シ ド」を音名と階名の両方で使っているので、ややこしく感じるかもしれませんね。

キーがAの曲の階名読みと音名読み

「階名読み」については後ほど詳しく解説しますが、この時点では「音名」と「階名」で読み方が変わることがわかれば大丈夫です。

絶対音感と相対音感

「固定ド」と「移動ド」と関連が深い、絶対音感と相対音感についても解説しておきます。

絶対音感は、聴いた音が12音のどれに当たるか判別できる能力です。楽器を鳴らさなくても、「ド」の音を聴けば「ド」、「ソ」の音を聴けば「ソ」と瞬時に判別できます。

絶対音感は主に幼少期にピアノなどで12音をすべて記憶することで身につきやすいと言われています。聴いた音が記憶した12音のいずれにもピッタリ当てはまらない場合は、どの音に近いかを判別します。
※国際標準ピッチであるA=440HZ(ヘルツ)を基準とした調律で絶対音感を身につける人が多いようです。

相対音感は、2つの音を聴いたときにどちらが高いか(低いか)を判別したり、基準音からどれだけ音が離れているかを判別したりできる能力です。相対音感は多くの人がある程度は備えている能力で、絶対音感に比べ、大人になってからでも身につけたり鍛えたりできます。

固定ドと移動ドの違い

では、ここから固定ドと移動ドの違いを詳しく解説します。

固定ドと移動ドは、「ドの位置を固定して読む」か「基準となるドの位置を移動させて読む」かが大きな違いです。加えて、相対音感か絶対音感かによって音の捉え方が異なります。

たとえば、キーがGメジャーの曲の場合、音階の最初の音は「G(ソ)」です。「ソ」を起点に音階が構成されるため、「固定ド」で読むと「ソ ラ シ ド レ ミ ファ♯ ソ」という表記になります。絶対音感で音を捉えると、このまま「ソ ラ シ ド レ ミ ファ♯ ソ」となります。

それに対して、相対音感で音を捉えると、Gメジャーの音階「ソ ラ シ ド レ ミ ファ♯ ソ」も、「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」となります。この説明だけだと混乱してしまうかもしれませんね。

以下の楽譜は、キーがGメジャーの音階(メジャースケール)を「固定ド」と「移動ド」で音の捉え方がどう変わるかを書き記しています。

キーがGの場合の固定ドと移動ド

上記のように、絶対音感の場合はキーが「Gメジャー」であれば「ソ」を起点として、音名読みで「ソ ラ シ ド レ ミ ファ♯ ソ」と認識されます。

相対音感の場合は、どのキーであっても音の起点を「ド」と捉えるため、キーが「Gメジャー」であれば「ソ」を「ド」と置き換えて認識されます。すると上記の譜面のように、キーが「Gメジャー」でも「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」の音の並びで読むことになります。「音をの幅を捉えやすくするために割り当てる単位」のようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。

前提として、実際に演奏するときに出す音、聴こえる音の高さは「固定ド」も「移動ド」も同じです。出す音、鳴っている音に対する呼び名が違うだけです。

では、別のキーも見てみましょう。以下はキーがAメジャーの音階(メジャースケール)です。「固定ド」は「A」=「ラ」を起点として音を捉えるので、「ラ シ ド♯ レ ミ ファ♯ ソ♯ ラ」となります。「移動ド」はキーが変わっても起点がいつでも「ド」なので、「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」の並び順は変わりません。

Aメジャー・スケールの固定ドと移動ド

上記をふまえて、以下の動画をご覧になってみてください。「固定ド」と「移動ド」の音の捉え方の違いがよくわかると思います。

「移動ド」=「歌詞」と考えてみよう

ここまで読んでもまだ「移動ド」がピンとこないという方は、「移動ド」は「歌詞」のようなものだと考えてみてください。童謡の『チューリップ』でご説明しましょう。

『チューリップ』はキーが変わっても、「さいた・さいた・チューリップのはなが」という歌詞は変わらないですよね?「階名」も同じで、キーが変わっても「ドレミ・ドレミ・ソミレドレミレ」の並び順で音を捉えます。

■キーが「Cメジャー」のチューリップ
歌詞:さいた・さいた・チューリップのはなが
固定ド:ドレミ・ドレミ・ソミレドレミレ
移動ド:ドレミ・ドレミ・ソミレドレミレ

キーが「Cメジャー」であれば、「固定ド」も「移動ド」も「ド」が起点となり、同じように「ドレミ・ドレミ・ソミレドレミレ」という表記になります。

では次に、キーが「Fメジャー」のチューリップの音階を比較してみましょう。

■キーが「F(ファ)」のチューリップ
歌詞:さいた・さいた・チューリップのはなが
固定ド:ファソラ・ファソラ・ドラソファソラソ
移動ド:ドレミ・ドレミ・ソミレドレミレ

キーが「Fメジャー」の場合は、「固定ド」では音を固有の読み方で捉えるので、「ファ」から始まり、「ファソラ・ファソラ・ドラソファソラソ」と読みます。楽譜の音名をそのまま読むということになります。

「移動ド」の場合、起点を「ファ」から「ド」に置き換え、「ドレミ・ドレミ・ソミレドレミレ」と読みます。実際に歌う音は「固定ド」と同じですが、音の読み方や歌うときに割り当てる音の名前が異なります。

キーが「Fメジャー」の場合の「固定ド」と「移動ド」の読み方の違いを楽譜で見ると、以下のようになります。

キーがFメジャーのチューリップの譜面

慣れていないと混乱するかもしれませんが、どのキーであっても起点の音を「ド」と捉えて楽譜を読んだり発声したりすることで、徐々に相対音感が身についていきます。

余談ですが、絶対音感があると、曲を聴いたときに音名が先に聴こえてきてしまい、歌詞が頭に入ってきにくい人も多いようです。日常の音が何でも音名に聴こえてしまうなど、絶対音感を持つがゆえの苦労もあります。

相対音感は音感トレーニングで鍛えられる

絶対音感は、幼少期を過ぎると習得が難しいとされています。対して、相対音感は年齢に関わらず訓練次第で習得が可能と言われています

幼少期における絶対音感の習得についての研究によると、幼少期は相対的に音を捉えることに長けておらず、音を絶対的な値として知覚する=聴こえたとおりに記憶する傾向があるそうです。

相対的に音を捉えるほうが効率的であるため、成長に伴って相対的に音を捉える感覚が優位になり、絶対的に音を捉える感覚が失われやすくなっていきます。そのため、絶対音感はできるだけ幼少期にトレーニングしないと習得が難しいと言われているのです。

大人になってから絶対音感を身につけるのは不可能ではありませんが、かなり難しいと言えます。一方で、相対音感の習得は大人になってからでも遅くはありません。プロの歌手や演奏家は必ずしも絶対音感を持っているわけではなく、多くの方が相対音感を鍛えることで音感を高めています。

参考:なぜ絶対音感 は幼少期 にしか習得できないのか?

相対音感を含む音感トレーニングについては、以下の記事で紹介しています。こちらもぜひご参考ください。

おわりに:歌上達のために相対音感を鍛えてみよう

最後に紹介した音感トレーニングの記事で詳しく解説していますが、相対音感を身につけることで「2つの音の高低」や「相対的な音の高さを聴き分けられる」ようになります。

カラオケで曲のキーを変えても歌える方は、基本的に相対音感が身についていると言えるでしょう。キーが変わると音がわからなくなる方も、相対音感を鍛えることでそれぞれのキーに合わせて音が捉えられるようになります。

歌がもっと上手になりたい方は、ひとつの手段として相対音感を鍛えてみましょう。

この記事の監修

多田 亘佑講師(ボーカル)幼少期から様々な音楽に触れ、高校では合唱の全国大会に出場。大学からアカペラの活動が本格化し、ブライダル関係を中心に雪まつり、スキー場のカウントダウンライブなどのイベントに多数出演。ハモネプで全国優勝した『じゃ~んずΩ』(現:JARNZΩ)のボイストレーニング・編曲指導・音楽プロデュースを経験後、2009年よりシアーミュージック札幌校に所属。 年間最大2500以上のレッスン実績があり、初心者からプロ志向の方を対象に、カラオケ上達から音楽活動のバックアップまでと目的に応じて幅広く展開。風船を始めとした身近な道具を用いたトレーニングや、独自視点の高音克服トレーニング・完全コピー(歌唱分析)・ハモリなど追究したオリジナルメニューで理解度・体感度・上達度の高いレッスンを特徴としている。
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